0人が本棚に入れています
本棚に追加
最初は戸惑いや躊躇いもあったが、やらなきゃこっちがやられるからな。
2回目の時には、もう馴れちまった。
「私は何のために戦っているのだ……」
戦が終わると必ずお前は嘆いていたよな。
何度も戦を経験しようが敵を殺すことをお前は躊躇った。それがお前の優しいところでもあるけど、弱点でもあったと俺は思う。
一人を倒し、一つの戦いを終わらせ、何度も勝利を重ねるうちに俺たちは騎士団として、誰にも、どこの国にも負けないように成長した。
よく言われるが青春っていうのは、俺たちにとって戦場でのことを言うのかもしれない。
やっぱり生きるか死ぬかの戦いを勝ち残った時、俺は自分が生きていると実感ができた。
だけど、そうじゃない奴もいるんだよな。
「男として、守りたい人が出来た」
とか何とか言って除隊した奴もいたな。
正直、女ってのは見た目も強そうじゃないし、口ばっか上手くて俺は苦手なんだけどさ。
俺からすると、ずっと使ってる剣が恋人のようなもんだった。
どんなに古くて劣化しようとも、俺は最後までこいつと一緒にいると誓った。
戦場へ行く時には必ず一緒だった。
数え切れないほどの戦に勝ち、幾年も過ぎた。
大戦が終わるって聞いた時は、何ともいえない不思議な感じがした。
その時にはもう心身共に朽ち果てて意識も朦朧として、気力だけで何とか帰ってきたって感じだった。
ガキの頃に夢見た英雄の凱旋をまさか俺が体感するなんて、ちょっとだけ笑っちまったさ。
「…………」
大音響の喝采を期待して門を潜ったら、住民全員の視線が刺さった。
まるで敵を見るかのような目つきだった。
あの時の光景をお前にも見せてやりたがったが、まぁ、結果的には見なくて良かったな。
「敵だ。殺せ!」
って、殺気を感じた瞬間、俺は意味も分からず逃げた。
守るべき市民に剣を向けるわけにはいかないしな。
最初のコメントを投稿しよう!