強者の証

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あの後すぐに知ったんだが、強くなりすぎた俺たちを国王が売ったんだとさ。 俺たちの命と引き替えに大戦を終わらせたって話だ。 死にもの狂いで戦い抜いた俺たちがまさかの反逆者だ。信じられるか。 月日が流れると一人。また一人と仲間が減った。 故郷に売られた俺たちに戻れる安息の地なんてどこにもない。 あの時の俺は自暴自棄になっていた。 だから、あんな残党狩りの攻撃を避けられなかった。 「お前はこんなところで死ぬ奴じゃない」 どうして戦うのが嫌いで優しいお前がお前が死んで、生きる意味も見出せない俺が生き残っちまったのか。 復讐か、世捨て人になるか死ぬほど悩んだが、今でも分からない。 分かったのは他人が何と言おうが、俺たちが戦い歩んだ道は誰にも汚すことは出来ない。 それが腕っ節の強い、何もない馬鹿な俺が考え抜いた答えだからな。 「…………」 ふと少し冷たい風が頬を撫でた。俺はなんだか無性に自分らしくないことを語ってしまったなと思った。 「もう弱音を吐くのはこれで最後だ」 剣筒から使い古された剣と鞘を抜くと墓の前にそっと置く。 「お前が身を挺して俺たちを庇ってくれた時の剣だ。やっと返せるな」 次に俺は腰から自分の剣を抜くと、墓の前の突き刺した。 「そして、コイツをお前に預ける」 次にここを訪れる時は、俺がお前を越えた時だ。 それまで預かっておいてくれ。今まで俺と共に戦った大事な恋人だからな大切に守ってくれ。 「ヘヘっ、いたぞいたぞ」 「生き残りだな」 「ほら、オレが言った通り、墓があると効果アリ、だろぉ?」 俺の背後から複数の下卑た声が聞こえる。 「ちっ」 俺は舌打ちをすると後ろを振り返り、同時に剣を抜く。 「え?」 「なっ?」 何が起きたのかを理解する前に男の一人が上半身と下半身が分断される。 「アイツは元から騎士なんて、向いていなかったんだよ。静かなところで本を読むが好きだったんだ」 「あぁ?」 「てめぇ、何を言ってやがる!」 まずはここを静かにしよう。 それから次にすることを考えよう。 最初はどうしようか、まずはアイツが育った国へ行ってみようか、と考えながら俺は2回目の剣を振る。 そうすればこんな俺でも、いつの日か生きた意味を見つけられるかもしれないよな。
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