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「そうだ、卒業記念と告白記念に桜の木の前で写真を撮ろう。」
和哉の提案で、俺は小さな桃色の花びらを満開に咲かせている桜に目を移した。
風が吹く。
弓道場は風が入りにくい場所に建てるのが多く、この大学でも裏山を切り崩した所にある。
だから、普段では感じない風を感じたと思った瞬間、春の突風が俺達を襲った。
目を庇うように手をかざしながら、璃緒奈の前に立つ。
そして風が過ぎ、俺は手の平に付いている物に気付く。
2枚の桜の花びら。
ああ、今度は手放したりはしない。俺の大事なものだからな。
卒業証書の筒の中に、それを入れる。
「誰のスマホで撮るんだ?」
俺はポケットからスマホを取り出して聞いた。
「ちょっと待ってね。ずっと録音してたから。」
璃緒奈がスマホを触っている。
「ああ、俺も録画中だった。」
胸ポケットからレンズ部分を出していたスマホを和哉が取り出している。
「まさか、おまえら……」
「記念に残さないとね。」「記念に残さないとさ。」
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最後まで読んでくれてありがとうございました。
補足として、
タイトルの『勝手の中』の勝手とは、弓道用語で『右手』という意味になります。
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