50人が本棚に入れています
本棚に追加
ヨシュアはおそらくドラゴンの被害を受けた場所を見たことがあるのだろう。息をのんで黙っている。
普段、雲よりも高い山の上で暮らしているはずのドラゴンの、しかも赤ん坊が、なぜこんなところに来てしまったのかはわからない。それほどにドラゴンは人間たちと接点がないはずだ。ドラゴンに襲われた村も、その村のハンターがドラゴンの目をひっそりとくり抜いて持って帰って来たことに起因している。マリアたちを襲うなんてことは普通は起こり得ない。
「私が絶対に人間を襲わせないわ。リリアがいるもの。そんなこと絶対にさせない。約束する」
加えてそう言うと、ヨシュアは頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
「負けました! わかりましたよ。で、何すればいいんですか?」
「手伝ってくれるの?」
「ここで手伝わなかったらジンさんに笑顔で殺されそうですもん」
おどけたヨシュアの口調に肩から力が抜ける。
「私の夫はそんなに怖くないわよ」
マリアも軽口で答えながら、顔をベビードラゴンに戻す。ヨシュアと話している間にも、手から伝わってくる鼓動は少しずつ早くなっていた。ベビードラゴンの背中に右手をかざして回復魔法と回復能力を上げる魔法をかける。
「まずは、ここの中を温めたいわね。回復魔法がどれほど効くかわからないし、回復魔法プラス普通の対処療法で処置するわ」
普段は村の人々の怪我や、軽いものなら病気も診ている。治療に対しての学があったわけではないが、コントラクターでの経験がマリアを怪我や病気に詳しくさせていた。
「回復魔法効かないんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!