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食育のススメ
声に驚いたのか、うつ伏せになっていたベビードラゴンが弱々しく顔を上げる。
透き通るような黄金色にも見える瞳がマリアを貫き、白い艶やかな毛が逆立つ。ドラゴンには間違いなさそうだが、見たことのない色の瞳だ。
「リュゥゥゥ」
威嚇するように口を開ける。まだ歯は生えていない。赤く小さな舌がちろりと見えた。
「少し弱っているわね」
ゆっくりと下からベビードラゴンに右手を差し伸べる。
「──っ!」
ベビードラゴンが目にも留まらぬ速さでマリアの指に噛み付いた。
「マリアさん!」
「大丈夫」
手の動きでヨシュアに気を落ち着かせるように伝える。
歯がないはずなのに、顎の力が強いのか危機的状況に火事場の力が出ているのか、食いちぎられると錯覚しそうなほどだ。自身に持続性の回復魔法をかけて、なんとか痛みを和らげる。回復魔法とは言っても、自己組織の修復能力を大幅に上げているだけなので、瞬時に治るわけでも痛みがなくなるわけでもない。痛む時間をごく短くすることと、血を早く巡らせることで、痛みを感じにくくさせているだけだ。
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