食育のススメ

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 マリアは心臓を抑え、呼吸を落ち着かせる。すでに心臓は痛みの部分へと血液を送ろうと早鐘を打っている。基礎体力が低いので興奮しすぎると、怪我の部分は治っても貧血になってしまう。 「大丈夫、大丈夫よ。あなたを傷つけたりしないわ」  撫でると驚いてしまう可能性が高いので、左手も手のひらを上にして、喉元をみせてベビードラゴンの前にだす。敵意がないことを伝えたいが、これでいいのだろうか。  ベビードラゴンは、うなり声を上げながらもちらりと左手を見て、マリアの喉を見て、自分の咥えている手を見た。黄金色の瞳が薄暗い洞穴の中で底光りする。ゆっくりと一つ瞬きすると、ベビードラゴンはゆっくりとマリアの手を口から離した。瞳が黄金色から黄色へと変化する。  うなり声が止み、ドラゴンの尻尾が力なく干草の上に伸びる。と同時に、パタリと頭から干草に突っ込んだ。 「マリアさん! 大丈夫ですか?」 「この子の方が大丈夫じゃないみたい」  敵意がないことを感じ取ってくれたわけではなく、単純に限界だったようだ。小刻みに身体が震えている。マリアはベビードラゴンの背中にゆっくりと手を置いた。ドクドクと鼓動が脈打っているのがわかる。ゆっくりと耳を近づけると息が荒い。 「マリアさん!」 「シッ! 静かにして」  ベビードラゴンから遠ざけようと肩を引いたヨシュアを振り返る。 「何をする気ですか!?」 「やれるだけのことをやってみるだけよ」     
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