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干草をゆっくりとベビードラゴンの前に持っていく。甘酸っぱい香りが鼻を刺激したのか、ヒクヒクと顔を動かすと、ベビードラゴンはゆっくりと干草を口に含んだ。草露を舐める猫のように干草を舐めたり歯のない顎で噛んだりして汁を吸っている。
「ちょっと待ってね。もっとあげるから」
汁気がなくなったのか、口からだらりと干草がはき出される。萎れた干草にさらに椀の汁を吸わせて、再びベビードラゴンの口元へ持っていく。今度は迷いなく、ベビードラゴンの口が開き、噛むだけではなく干草を舌でしごき始めた。吸うようにして口をすぼめ、口の中でぎゅっと押しつぶすようにして汁を喉に流し込んでいる。
「そうよ。とっても上手」
力強くなる口の動きを励ますようにマリアが声をかける。
2回ほどお代わりをして、満足したベビードラゴンはゆっくりと目を瞑った。お椀の汁はほんの少しだけ残っている。
「ヨシュア、もういいわよ。ありがとう」
ライトの魔法を解いたヨシュアがどさりとその場に座り込む。思っていたよりもヨシュアにとっては重労働だったようだ。
ベビードラゴンの背中をゆっくりと撫でる。やがて寝息が聞こえ始めるとマリアは背中に干草をかけた。
「ありがとう、ヨシュア。あなたのおかげで、この子、とっても気持ち良さそう」
「俺は汗だくですけどね。ドラゴンてのは寒いのが好きだと思ってましたよ」
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