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「おい。ババァ、」
「…ん、…………」
腕に食い込む程に爪を立て、身体を力一杯に揺さぶる。すると、切れ長の紅眼がうっすらと開き、少年を嫌そうに睨んだ。
けれど、少年に敬遠なんてものを察する能力は皆無で。
「腹減った。ババァ、起きろ。腹減った」
「っ…、うっさいっ…
私は疲れてんの。寝かせな!」
当たり前の欲求を訴えれば、返ってくるのは暴言と、暴力。少年はかれこれ、三日。食事と言う食事をしていない。
だがこれも、少年にとっては、よくある日常。
当たり前の日々、風景。
これ以上、女を怒らせてはならない。次は、男が出てくるから。
少年にはそんな認識しかなく、結局。外に出、食料探し。金もない、力もない、頭脳もない。
あるのは、家から持ち出した鋏と、小型の折り畳みナイフだけ。
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