野良猫のような少年

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「おとーさん、おとーさん、」 「何だ?」 「今日のご飯は何だろうね!」 「はは、さぁて…、 母さんが何作ってるか、楽しみだなぁ~」 黄昏時。少年は土手でぼんやり、行き交う人々を眺めていた。田舎と言えど、騒がしい街並み。 幸せを溢した顔して歩く人間が、異次元の生物に見えてしまう。理解が出来ない。嫌悪感や気鬱さが生じる理由すらも、よくは飲み込めない。 腹の虫が鳴くばかりじゃなく、騒ぐ。少年の心に渦巻く闇は最早、同化を果たそうと足掻いているのかも知れない。 「…、飯」 飽くまでも、純粋に。 御腹が減っただけだ。だから、御飯が食べたい。 口に入るものなら、例え不味くたって良い。 せめて人間らしい物を食べられたら、それだけで――ポッケから取り出し、握ったナイフ。 少年に与えられた生きる術は、過酷で、残虐で、余りにも救いようがなくて。
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