叶うはずのない恋

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初めから叶わない恋だと分かっていたはずなのに、何を期待していたのだろう?ほんの少し近付けたからって何?十文字くんの瞳に私が映ることはきっと無い。あれから、十文字くんは一言も私と言葉を交わさない。私の存在を消してしまったように、自分の隣の席には元から誰もいなかったと言うように彼は一切こっちを見ない。あの最悪の金曜日から二日経った月曜日の朝。月曜日になれば十文字くんはきっといつものように隣の席の私に声を掛けてくれる。そんな淡い期待はあっさり裏切られた。教室に入ってきた十文字くん。いつもだったら、自分の席に座る前に、『おはよう』と必ず言ってくれたのに、十文字くんは私の方なんて見向きもしなかった。目の前が真っ暗になるような衝撃だった。席が隣になった時から毎朝毎朝欠かさずに挨拶してくれていたのに。その一言が私の1日の始まりであり、私の全てだったのに。哀しすぎて涙も出ない。隣にいることがこんなにも苦しい。胸が張り裂けそうなほど痛い。十文字くんの隣にいることがこんなにも辛いなんて。今までは時間の流れがとても早く感じられたのに、1日がとても遅く感じた。私と十文字くんの間に流れる重い空気が見えない壁を作り、こんなにも近くにいるのに、言葉を交わすことも触れることもましてや目を合わせることもできなくなってしまった。そんな状態のまま期末テストが始まった。こんな精神状態でのテストなんてただでさえ働かない頭なのに。でも、赤点は絶対に取りたくないし、数日間十文字くんに教わったことを無駄にしたくない。「おい」数学のテスト中、十文字くんに声を掛けられた。驚いた私は、思わず声を出してしまいそうになり必死で抑えた。「すまないが消しゴムを貸してくれないか?」十文字くんが私を見てる。何日振りだろう?嬉しくて発狂しそう。泣くのをこらえて、震える手で消しゴムを十文字くんに渡した。一瞬、手が触れる。このまま時間が止まってしまえばいいのに、なんて思えるほどの余裕もない僅かな瞬間だったけど、それでも私の心のメモリーを占領するのには大きな出来事だった。だけど、奇跡はその瞬間だけだった。休み時間の間に机の上にポツンと置いてあった消しゴムが、まだ見えない壁は壊れていないと教えていた。
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