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「あなた、氷…氷。見つけて…来た」
とりあえず聞き流すことにして、上体を起こそうとした。
その時気付いた。自分の腕からチューブが出ている。点滴をぶち込まれていた。しかも一本では無い。両腕に二本づつ、足にも…。鼻からもチューブが出ていた。
そして白いパジャマを着ていた。
どこからともなく灰色の女性が出てきて、エリが起きるのを手伝ってくれた。二人の男たちも、エリの鼻から出ているチューブを抜いたり、何とか手伝おうとしていた。
腰が…腰が…ずっと眠っていたからなのか、腰が痛くて仕方ない。
腕で上体を支えて、やっとの思いで座った。
どうやら灰色人間たちは親切だということが分かった。
「エリ、僕、かんろあうです」
何のことだ。
「名前、かんろあう。僕、ニチ語話せる」
ニチ語…?日本語のことか?
「やまとみん担当…でぇす、んろ…と呼べ」
「んろ…?」
「はい」
二人の男は、その棺桶から無数に伸びているコードの先にある、パソコンらしきものを見ながらしばらく話しをしていたが、エリには何も言わず、看護婦(多分)と共に出て行った。
エリは一人になった。
とりあえず、棺桶から出ようとしたが、ものすごくツルツルしていて深い。まるで蟻地獄に落ちたアリのようにもがいた。
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