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扉が開いて、男が入ってきた。
日本人だ。年は30過ぎくらいで、眼鏡をかけていて髪は七三にわけ、ちょっと古臭いポロシャツをズボンの中に綺麗に入れている。
「こんにちは」
あぁ、、、エリは微笑んだ。
「こんにちは、ここはどこなの?」
「民族科学研究所。僕は古田、宜しく。エリさん…」
古田は微笑んだ。
聞きたいのはそこぢゃ無かったが、食いつく元気も無い。
「大丈夫?話しても?」
「…えぇ」
「君はどこから来たの?」
「え?私…」
そう言えば、自分は一体どこから来たのだったっけ…。エリは思い出そうとした。
夕べ…夕べ…夕べ…、、夕べ?
いや、違う。夕べ…じゃない。昼間、
そうだ、
「私、海で溺れたの…助けてくれたの?」
「…いや、君は…海…じゃなくて、冬山で見つかったんだ」
「冬山?」
エリは自分が復唱した言葉を何とか飲み込もうとした。…冬山…。
古田は人懐こい笑顔で軽くうなずいた。
「君はまだちょっと意識がまだ朦朧としているんだろう…ゆっくり休むといい…」
「いえ、あの…本当なんです。私…海で………」
古田の笑顔に、エリは不安になった。
古田は疑いようの無いほど、誠実そうに見えたからだ。
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