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声の主は抱きついたまま焦れたようにレイの名前を繰り返し、髪に、頬に、肩に、ぐりぐりとおでこを押し付けてきた。
その頭には大きな耳が生え、尻からは立派な尾がはみ出し、バッサバッサと大げさに揺れるせいで風圧が起こる。
よく見れば、いつもは青い瞳がルビーのように赤く変化し、興奮状態なのがまるわかりだ。
「落ち着けジャック」
「むりだよ。レイいい匂い。くっついていい?」
「もうくっついてるだろ」
「違うよ。一晩中くっついて、一緒に眠っていい?」
「おとなしく寝るなら、いい」
「ううぅ……」
自信がないとでも言うようにぺったりと耳を垂れ、ジャックが葛藤している。
その間に大きな体を突き放し、ベッドへと移動した。
しょんもりと肩を落とし、入口で立ち尽くしているジャックに、あきれを通り越して愛おしさが湧きあがる。
「まったくでかい図体のわりに中身はてんで子供だな。ほら来い」
毛布をはぐって自分の真横に空いたスペースをトントン叩くと、ジャックが瞳を輝かせてベッドにダイブした。
「レイ大好き!」
腕の中に捉えられ、また頬ずりをされる。
ジャックはオオカミ男だ。満月が過ぎた後も数日は気持ちが昂ってしまうらしく、毎度この調子で困っている。
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