空はいつも同じで……

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「やっぱり夜空は気になりますか?」  縁側で、ぼんやりと空を見上げていた結城礼門に、風呂上がりの浅田侑平が声を掛けてきた。やっぱりというのは、過去の職業を指してのことだろう。礼門はかつて、陰陽師だった。 「いや。そんな理由で見ていたわけじゃないよ」  だから礼門は、まさかと笑った。天の動きから運命が読み取れるなんて、生まれてこの方考えたことはない。 「さすが。根は科学者ですね」  よいせと、大学生らしからぬ掛け声とともに、侑平は礼門の横に座った。そして同じように空を見上げる。  寺の中は暗く、夜空を見上げるには打ってつけだ。そもそも、この地域自体、田舎に分類されるほどの人口しかいないから、夜空は非常に美しく見える。今日は満月で、その姿も美しかった。 「そうだな。そう言ってもらえると、嬉しい。それに、あの星たちの光が、過去から届いたものだと思うと、懐かしいやら悲しいやら、不思議な気分にしかならないよ。でも、あの日を忘れないためにも、いつも、特に月夜は見てしまうな」 「天牙さんに、呪を掛けられた日、ですか?」  いずれ侑平にも掛けられる、永遠の時を生きる呪。すなわち、輪廻を止める呪だ。 「ああ。あの日は美しい満月でーー忘れられないほど美しかったよ」  礼門はしみじみと呟く。その横顔に悲壮さはないが、複雑な感情が見え隠れしていた。
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