4人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうですね。って、そうか。この時代にいるってことは、誰かの生まれ変わりなのか」
ふと思うと、今の今まで考えなかったことだ。輪廻転生。それに関わる出来事の最中にいるというのに。
「ま、どこまで本当なのかは解らないけどね。少なくとも、死ぬこととイコールで考えてしまうからね。次に進む、というイメージかな。残念ながら、俺も千年以上生きているが、誰かの生まれ変わりって解ったことなんてない」
「そ、そういうものなんですか?」
傍に閻魔大王の一部がいるのにと、侑平はそちらが意外だった。
「ああ。しかし俺や君は特殊で、実際に鬼も神も仏も存在することを知ってる。ということは、輪廻転生はあると考えるべきってことだよ。実態を知らないだけでね。多くの人が、あると考えて生きている限りは、あると考えるしかない」
「そう、ですね」
つまり未だ定義のない現象なのだ。それは礼門の定義する能力が永遠に及ばない、本当に不可思議な世界。
侑平はまた夜空を見上げた。今日も変わらず、満月は夜空に輝いている。
「しんみりしてしまったな。すまない。こんなことに巻き込んだうえに、俺は、君を救えないのに」
「ーー」
不意討ちに言われた謝罪に、どきりとして、否定の言葉が出なかった。
最初のコメントを投稿しよう!