遠く、遠く、遠く

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 姉がいなくなって初めて、私は泣いた。青空は、私に何もしてくれなくて、空はやっぱり、私が泣いているといつも駆けつけてくれた優しいお姉ちゃんではなかった。  どうしてなんて、わかっている。私のせいだ。 「ごめん、ごめんね、お姉ちゃん……っ!」  ごめんなさいを何度叫んでも、姉は、もう二度と帰ってこない。帰ってきてはくれない。    ……姉がいた学部の人、たくさんやめたのに、その中にはきっと姉を追い詰めた人々も含まれていたのに、今も、姉が帰ってこないのと同じだ。どうしても、どうなっても、もういない姉は、帰ってはこられない。  いっそ、私もお姉ちゃんのところへ行けたら。 「……ううん」  ――お姉ちゃんは、私を許さない。私が死んでも生きても、きっと許さない。それだったら、同じところにいってはいけない。……お姉ちゃんがいなくなっても、さらに裏切りを重ねる勇気は、私には持てない。いつも一緒だった私たち、もう一緒には、いられない。  身近な人を亡くした痛みは知っていたけれど、身近な人が自ら命を捨ててしまった痛みが、こんなにも深く、痛いものだなんて、一生知らずにいたかった。まるでそれ自体が罰みたいに、お姉ちゃんの死は、私を刻んだ。  ……この痛みは、永遠に、癒えることはないのだろう。そうあることを、私が許さないからだ。
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