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屋上に来る。がらんとした、貯水タンクしか物がない寂しい空間だ。柵の高さは、腰くらい。あんなことがあった後でも、柵は変えないらしい。……もう使わないビルに、そんなお金、かけられないのだろう。
ふらつく足取りで、屋上の端まで行く。手すりを両手でしっかり握って、恐々と地面を見下ろした。……高い。五階といえども、思った以上に高い。高所恐怖症なわけではないのに、背筋に悪寒が走った。こんなところから飛び降りるくらい、姉は、つらかった。
……でも、私も、ここから飛び降りた方がいいのかもしれない。
私は姉が憎くて、死んでほしいと思ってしまったことは、一度や二度じゃない。けれど、支離滅裂なのは、自覚しているけれど、本当に死んでほしかったわけではないのだ。
姉と遊んだ、幼い日々。鬼ごっこして、姉の方がずっと足が速いから、私がいつも負け通しで、悔しくて悔しくてたまらなかったけれど、でも姉は、私を馬鹿にしなかった。それどころか、「ちょっと速くなったんじゃない?」なんて言って、私を元気づけようとした。それならいっそ負けてくれればいいのに、そういうことは、ちっともしなかった。
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