遠く、遠く、遠く

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 初めて二人で買い物に出かけた日。私が財布を忘れてしまって、姉は、嫌な顔一つせず、お金を貸してくれた。「あたしが何か困ってたら、そのときは助けてね」なんて、冗談っぽく笑った。  テストの前、出来の悪い私に根気強く、姉は勉強を教えてくれた。「あんたってあたしと頭の出来は似たようなもんなのに、ちょっとケアレスミスしやすいだけで損しすぎでしょ」と、よく言われた。その上で、ケアレスミスを減らす方法について一緒に考えてくれた。……おかげで、ちょっとだけ、ミス、減ったのだ。  姉に手を差し伸べられるたび、私は嬉しさよりも劣等感を覚えるような、嫌な妹だった。どうして姉みたいになれないのだろうと、小さくなって、縮こまって、周りの言葉に怯えていた。  私が嫌いだったのは、そういうもの。そういうものに怯えてしまう、自分自身。  ……本当の本当は、私は姉が、嫌いではなかった。  ――そして、空を見上げた。見上げた空は澄んだ青で、私の気持ちなんて無視したさわやかな色合いは、なんだかいつもキラキラ輝いていた姉みたいなんて思う。 「どうして……」  姉の笑顔を思ったら、一年と一週間、ずっと止まっていたものが、こみ上げてくる。  いない。どこにも。もういない。いない。いない。  私の全部に、やっと、染み込んでいく。 「どうして、死んじゃったの、お姉ちゃん……」     
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