第二章

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「結局は、私の話なんて、真面目に聞くものじゃなかった。ただの子どもの話でしかなくて、本を読む片手間に聞き流すものだった。そうでしょう?」 「真面目に聞いていたかどうかはともかく、子供の話だったのは仕方ないんじゃないかな。実際、君は子供だったんだから。だけど、いまはそうじゃない。そうだろう?」  大輔の何気ない一言は、思いがけず美咲に響いたらしい。はっとした目になって、子供じゃない、と美咲はつぶやく。そして、大輔を見上げた。 「それは、世間一般的に見てということ? それとも、個人的に見てということ?」  言わんとすることは、なんとなくわかった。けれども大輔は「なにか違いが?」と気付かないふりをした。すると、探るような間のあとで、ふいに足の下の方からすぅっと這いあがるものを感じる。  白くほっそりとした女のつま先は、くるぶしをまさぐるようにしてから、痺れるような緩やかさでふくらはぎから腿へと這ってゆく。脚の外側をなぞっていたものが、とうとう足の付け根に辿り着くと、つかの間そこへ留まり、それからさらにゆるやかな動きでそっと内側へと寄っていく。  少女の身体を覆う白い布は、足が上がってゆくごとにゆるやかにすべり落ち、そのときには脚のなめらかな肌がすっかり見えるほどだった。肌の色は、シーツの無機質なものとは異なり、内側から輝くような鼓動を秘めた、鮮烈な白だ。その白を惜しげもなくさらした先で、少女はかすかに首をめぐらせ、微笑む。  そのとき大輔は、妙に落ち着いてしまった。無理に掻き立てようと誘われた、ちりりとするわずかな熱とは別に、頭の方は醒めていってくっきりとする。相手が何をしたいのかわからない困惑が、確信を得て平らかな静けさに変わっていった。
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