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中間テストが終わってからしばらくが経ち、今度は期末テストが影をちらつかせ始めたころ、初めて千華が電話に出ない時があった。
電話をかける約束をしていたわけじゃなかったけれど、それはいつものことだし、かけた時間もいつも通りだった。
翌朝、千華からメールが来た。どうやら、昨日は疲れて早く眠ってしまったらしい。この前は、少し熱があるとも言っていたし、少し心配だ。何もできないもどかしさが僕を苦しめる。
……でも、これくらいのこと、なんてことない。まだこの関係は始まったばかりだ。この先いくらでも似たようなことはあるだろう。
それでも不安が募った。僕はこんなに弱かっただろうか。
部活が忙しくなってきたらしい。電話に出られなくなることが増えそうだとか。
もちろんそんなの嫌だ。でも文句なんて言えるわけがない。僕にはただ「がんばれ」と「無理するな」という矛盾した、それでいて何の意味も持たない言葉を繰り返すことしかできない。
ここから別の星までの距離に比べればどうってことのないはずの距離。でも、僕にとって千華がいる場所は、何光年も離れた遥か彼方のように思えた。
それからも、電話の頻度はどんどん減った。いくら部活が忙しいからって……。
他の男と歩く千華の姿が浮かんでは、それを必死にかき消して、二人の思い出を頼りに、どうにか心だけは見失わないようにした。
メールのやり取りはまだ続いている。たとえ他愛ない内容でも、僕を支えるのにはそれで十分だ。……そう自分に言い聞かせた。
良いニュースだってあるんだ。それは、結構な額のお金が貯まったこと。これだけあれば、余裕をもって会いに行ける。
そうだ、会いに行くときは内緒で行こう。
驚いた彼女の表情を思い浮かべると、自然と頬が緩んだ。
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