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偶然というのは意外と重なるもので、二人とも帰る方向が一緒だったり、クラスは違っても出席番号が一緒だったり、天文部があるという理由だけで同じ中学を選んでいたり……彼女は、僕には眩しすぎるほど輝いているのに、どこか親近感を抱いてしまう。
話題は尽きず、むしろ時間がいくらあっても足りないくらい。
あまりにも共通点が多かったので、彼女の星野千華という名前と僕の名前、松本優太にも関連性を探してみたりもしたが、さすがにそこまでうまくはいかない。
それに、いくら共通点が多いといっても、僕と彼女の性格はやっぱりかけ離れていて、奇跡的に会話が弾んだのも、快活で話し上手な彼女のおかげだった。
女子と下校なんていうのも初めてで、心臓が痛いほど鼓動を速めていたけれど、それでも頑張って話そうとしたあの時の僕を自分で褒めてやりたい。
「ほ、星野さんは、どうして職員室が苦手なの? 人と話すの得意そうなのに」
僕にしては、精一杯踏み込んだつもりの質問だ。単純に、彼女のような明るい人が僕と同じように尻込みしていた理由が気になったから、聞いてみたかった。
けれど、僕の予想に反して、大それた理由があるわけでもないらしく、彼女は首を捻る。
「う~ん。なんとなく? なんかあの雰囲気が苦手なの。それに、人と話すのがそんなに得意ってわけじゃないから。あ、でも松本君は平気だよ」
「そ、そう?」
満面の笑みでそんなことを言われるなんて、本当に心臓に悪い。さっきから掠れてばかりの情けない声が、ますます恥ずかしさを加速させる。けれど、彼女の方は大して気にする素振りも見せず、それが何よりもありがたかった。
「うん。それで、松本君はどうして苦手なの?」
「僕は単に、大人と話すのが苦手ってだけだよ」
「あー、それもわかるよ」
うんうんと頷いたあと、彼女はくるりと向きを変える。
「あ、私こっちだから。また明日。これからよろしくね!」
離れていく背中をボーっと見つめたまま、僕はその場からいつまでも動けずに、ただ頬が熱を持つ感覚に支配されていた。
それもしょうがないことだろう。思春期に突入したばかりの内気な少年にとって、運命的な出会いと自分に優しい女性ほど弱いものも他にないのだから。
至極単純なことだ。このたった一回のやりとりで、僕は彼女に惹かれてしまった。
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