ベテルギウス

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 そして、千華のいない高校生活が始まった。クラスには同じ中学だった人も何人かいて、千華とのことを同情された。  でも、僕は同情される覚えなんてない。千華とは毎日連絡を取り合っているし、寂しくないと言えば嘘になるけれど、二人なら絶対に乗り越えられると信じているから。  高校にも天文部はあった。その部室の前を通り過ぎたときに、千華と見た星空が一瞬脳裏に浮かんだが、千華が隣にいない天体観測なんて意味がない。  部活には入らない。千華に会いに行くにはお金がいる。バイトをしないと。  千華は部活に入ったらしい。バスケ部のマネージャーだとか。千華は小学校でミニバスをしていたらしいし、元々バスケが好きだった。……それに関しては少しだけ不安になる。勝手なイメージでしかないが、運動部のマネージャーなんて絶対モテるじゃないか。ただでさえ、千華は贔屓目なしに容姿が整っているんだし。  千華もバイトをしろ、なんてことはさすがに思わないが、少しくらい僕の気持ちも考えてほしい。もっとも、そんな女々しいこと、千華には口が裂けても言えない。   「友達に誘われて入ってみたけど、マネージャーってのも思ったより大変だね。しかも私、想像以上に運動不足でさ、すぐに息切れしちゃうの。選手たちよりゼーゼーしちゃって、すっごく恥ずかしかった」  受話器越しの千華の声は、離れてしまう前と何も変わらず楽しそうに弾んでいて、もちろんそれは嬉しかったけれど、ほんの少しだけ胸がチクリと痛む。 「そっか。応援するけど、無理はするなよ」 「うん。……ユウ君は何の部活入った? やっぱり天文部?」 「……うん、そう。天文部。よくわかったな」 「だって、他にユウ君が入りそうなのなんてないじゃん」  なんとなく、バイトばかりするつもりだと伝えるのが嫌で嘘をついた。千華に妙な気を遣わせたくはない。こうやって楽しそうな声を聞けるように、千華には生き生きと過ごしてもらいたい。 「天文部か……。いつか、また二人で星を見ようね」 「うん」 「約束だよ」 「ああ、約束」  こうやって少しづつ約束を増やしていこう。そして、また隣に居れるようになったら全て果たすんだ。   そう思えば、いくらでも頑張れる気がした。
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