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少しづつお互いの生活も落ち着いてきて、千華との電話も大体三日に一度くらいの頻度に自然に収まった。
「……なんか、元気なくないか?」
いつも声だけを聞いていると、段々、声だけでお互いの調子もわかるようになってくる。
「やっぱわかる? なんか貧血っぽくってさ。少しダルいんだ」
答える声には、やはりいつもの張りがない。
「体には気をつけろよ」
「わかってるよ。ユウ君、なんかお母さんみたい。それに、ユウ君だって調子悪いでしょ? 声でわかるよ」
図星を突かれて、僕は言葉に詰まった。
「……ああ、昨日遅くまで中間テストの勉強したってだけ。少し寝不足」
「大丈夫ー? 慣れないことはするもんじゃないよー」
「うるせぇよ」
僕をからかう声はいつも通りで少し安心。
……寝不足も、僕が遅くまで勉強するような柄じゃないっていうのも本当のこと。でも、力仕事のバイトが思ったよりキツイことや、それを理由に成績を落とす訳にもいかないという本音を話す気はない。
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