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「どういうこと?あっくんは、私と同じ交通事故に遭って亡くなったんじゃないの?」
私は使える右手で友美の腕を掴んだ。
友美は、私の発言と行動に驚いた表情をした。
「えっ、覚えてないの?」
「自分でもよく分からないけど、事故にあった日の記憶がないみたい…。」
友美は、バッグから手帳を取り出し、その間に挟めていた新聞の切り抜きを差し出した。
その切り抜きはあっくんの事件に関するものだった。
『大学生、胸刺され死亡』『怨恨か?』などが書かれていた。
あっくんは、人から憎まれるような人じゃないのに。
「それを見てどう?何か思い出した?」
「ううん。頭痛がするだけ。」
友美は、腕を組んで考えた。そのポーズは、少し探偵っぽかった。
「これは、記憶喪失ね!」
言っていることは、誰にでも分かりそうな事だけど。
彼女のちょっと天然な発言に気持ちが落ちついた。
そして、私はある決心をした。
「友美、お願いがあるの。」
私の真剣な声に友美も真面目な顔をする。
「彼の事件の真実を知りたい。自分の記憶を思い出した。協力して。」
昔から私が頼み事をすると、同じ返事が返ってくる。
「いいわよ。真実は麗の記憶のなかにあるってわけね!」
彼女が私のお願いを断ったことは1度もない。それを分かっていて、こんな無茶なことを言っている。
「ありがとう。」
その日から私たち2人の探偵活動がスタートした。
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