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第一章 幼少期編
「ねえサイラ、まさかこれだけの作業で疲れたとか、そんな訳の分からないこと言わないでしょうね?」
「……大丈夫です、ごめんなさい」
「ったく……ほんとに役立たずなんだから」
8の月の炎天下の元、サイラは大人の女の罵声を受けながら畑で野菜の収穫をしていた。
光を受けて銀に輝く髪の毛は汗で額に張り付き、白い肌は日にさらされて赤く熱を持っていた。背中には体に不釣り合いなほど大きなかごを負い、息を切らせてふらつきながらも作業をこなしていく。
休めば叱られるどころか最初から少ない夕飯が無くなるという事は分かっていたので、サイラや別の列で同じように働いている子供たちは僅かな休憩すらできなかった。
働くこと数時間、やっと日が落ちて子供たちは宿舎に戻ることを許された。
「今日採ったお野菜、晩御飯のスープとかになるのかなぁ」
「やめろよツバキ、俺たちが今まで働いて収穫した野菜を俺達が食べたことがあるか?」
ツバキと呼ばれた黒髪の小柄な少女は、えーと不服そうな顔をしてため息をついた。
ツバキをたしなめた茶髪の少年は、怒りをあらわにしてさらに言葉を続けた。
「大体ここの大人なんか、俺たちに仕事させといて、自分たちは俺たちが頑張って作った野菜とか物とかを売って金稼いでるんだぜ。
なのに俺たちはちゃんとご飯もお腹一杯食べれないし、逆らったら痛い目遭わされるし……。
こないだなんて、イース……あいつ、園長を怒らせて、何回も殴られて、っ、死んだんだろ?
俺たちだって、いつ死ぬのかわかんねぇよな……。」
その言葉を聞いて、今まで黙って一緒に歩いていたサイラは口を開いた。
「……だめだよハル、そんなこと園の大人の人に聞かれたらハルも死んじゃう」
ハルと呼ばれた少年は、サイラの方を振り返って困惑した顔で言う。
「でもサイラ……お前だってあの女に目付けられて意地悪なことばっか言われてるのに、平気なのかよ」
「うーん……平気ではないけど、私はここ以外に自分が生活する場所を知らないから。」
そう言って諦めたような小さな笑みを零すサイラに、ツバキとハルもつられて元気のない表情になる。
「……じゃあ、4人で逃げようよ」
「!!」
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