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突然脱走の提案を持ち掛けた、今まで一言も話していなかった濃紺の髪の少年に、3人は同時に目を向けた。
「脱走……って、お前本気で言ってるのかよ、シンス!?」
「うん。僕ね、少し前に園長と見回りの人が話してるの聞いたの。
『先生、何歳になるまであの年長の子供を置いておくのですか?』
って見回りの人が尋ねてて、園長は
『……もうそろそろ成長して無駄な知恵をつけてくる頃だろうからな。
大人になってからも面倒見てやるとか面倒だし、そろそろ憂さ晴らしに殴り殺していい頃合いなんじゃねえか』
って言ってたんだ。
多分、年長の子供って僕たちのことだ。
……僕たち、このままここにいたらきっと殺される。
外の世界に出たところでどうやって生きていけるのかは分からないけど、ここにいるよりは絶対安全なはずだ」
「でも、どうやって逃げるんだ?園の周りには高い柵があるんだぞ?」
「こないだ掃除してた時、ちょうど園長がどこかから帰ってきたみたいで、園長はいつも鍵がかかってる門じゃなくて職員用の別の入り口から出入りしてるみたいなんだ。
それで、ばれないように掃除道具を片付けるふりをして近くまで行ってみたんだけど、そこの門は宿舎の中からしか出入りできないみたいだった。
だから一人で作戦を立ててたんだけど、夜に園長とか大人を外に出してその隙に建物の中からその門に行くためにどうすればいいのかな、って。」
考えを巡らすように瞳を閉じたシンスに、うれしそうな様子で声をかけたのはツバキだった。
「シンス、本気で脱出計画立ててるんだね……。よーし、あたしも一緒に脱出する!!」
「うん、決まりだね。
ハルとサイラは、どうする?」
先に口を開いたのはハルだった。
「でも、見つかったら間違いなく殺されるだろ……?
サイラはどう思う?」
「……私、は、確かに怖いけど、なんだかみんなと一緒なら逃げられる気がする……かな」
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