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夜の森の少女。木犀が仄かに香り一年で最も過ごしやすくなった頃、朝霞北高校ではこの噂に影が差した。
「知ってる? 最近噂になってる怪談話なんだけどー」
「シンディーちゃんよね。あの人形可愛いわよね」
派手な金髪ギャルの桃とクールな優等生の蜜柑。そして、その会話を怪訝な表情で見つめる林檎。
昼休みに何気なく始まった会話だが、この会話はこのグループだけのものではなく、全校生徒が興味を向ける対象となっていた。
「それであんた達はあの噂どこまで知ってる?」
「あの朝霞の森のトレーラーハウス、あの中に座っているシンディーちゃんが移動するのよね?」
「たしかにそれだけでも十分ホラーだけどさー。林檎は何か知らない?」
蜜柑の飢えた肉食動物を思わせる鋭い目つきで林檎に問うが、林檎は首を大きく横に振る。
「試しに閉園間際にでも確認に行きましょうか」
「そうね」
二人は決定事項であるかのように会話を進めていき、昼休みが終わるチャイムが鳴った。その時の二人の表情は、すでに何かに取り憑かれているように興奮で赤らみ、興味を隠しきれない様子だった。
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