中谷聖子の生活とは

8/10
前へ
/150ページ
次へ
「あ、あの先生は?」 思わず言葉に躓いた。 「あー、すみません。近くの大学生さんで、ボランティアで来てくれたんですけど、まさかあんな髪色で来るとは思わなくて。 園長先生、カンカンですよ」 「ですよね」 あの髪色で保育園にボランティアに来れるなんて、強靭な心の持ち主だ。 「今日一日だけなんで、すみません」 「あ、いえいえ!」 風太もブロックをやめて、聖子の元に来た。さやか先生は他の保護者対応へ。 荷物の準備をしながら、今夜の晩御飯を考える。 靴下を履かせようとしたら、風太が怒ってしまった。 「もみじせんせー!またぁねぇー!」 「おう。またね」 赤髪の大学生が近づいてくる。 風太、、何故声をかけた。 「あ、えっと、お、お世話になりました」 何故こちらがぎこちなく挨拶をしなければならないのだろうか。 「ふーたくんって、人望ありますね」 「え?」 赤髪の先生が、真っ直ぐこちらを見つめる。 「まだ小さくて、何もできないから友だちが寄ってきてるんかな?って思ったんだけど みんな、ふーたくんの空気に引き寄せられてんすね」 心臓の音が 大きくなる。 「今日1日しかいなかったけど、何となく分かりました。ふーたの醸し出す空気。癒しっつーか、なんつーの?上手く言えないけど」 その言葉の後に「あ、ふーたくん。くん。すみません」と付け加える赤髪。 そんな赤髪の言葉に、涙を必死に止める聖子。 そう。 そう、誰かに言ってもらいたかった。 早生まれだから、小さいから、赤ちゃんみたいだから、ではなく 風太自身が何か持ってるから、友だちが寄ってきてくれるんだって。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加