コンクリートの隙間に

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スキルアップのための転職をして1年目。 今日も気付いたらもう22時。疲労で頭が締め付けられるように重い。 自ら望んで選択した今の会社。ずっとやりたかった仕事。憧れの世界が毎日目の前で繰り広げられている。 それなのに毎日の業務に忙殺され、それらのすべてが自らの前を通り過ぎて行く。形式上のルーチンワークをこなすことに精一杯で理解が追い付かないまま時間だけが過ぎて行く。焦りを感じつつもそれを補うだけの気力もない。なんだかもうどうでもいい。 そういえば彼氏にもここ3週間会っていない。転職前は週2回は互いの仕事終わりに共に食事をし、どちらかの家で何をするでもなく過ごしていた。同期が次々と結婚していくことに焦りがないわけではない。しかし30を目前にして結婚を急かすなどという面倒な女にはなりたくない。私達には積み重ねてきた4年間がある。このまますれ違ってしまった結果それが消えてしまうことなんてきっとない。そんな不安に負けそうになっている暇もない。 これがずっとやりたかった仕事。なのになんでこんなに辛いんだろう。なんで頑張れないんだろう。自分はどこに向かっているんだろう。なにがしたいんだろう。わからない。帰りたい。 仕事も片付かないし外の自販機で甘い飲み物でも買おう。重い腰を持ち上げて会社の外に出る。 そうか夜はもう肌寒いんだ。夏が終わったことにも気づかなかった。 ホットと少し迷ってアイスココアのボタンを押したところでメッセージを受信した。 「今日は満月がきれいだよ」 無機質なビルの隙間から見える満月は大きくて、髪をすり抜けるひんやりとした風が心地良かった。
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