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シェスが目を見開いた。
「燃え尽きて、あの空まで飛んでいける。そう、思ったから」
ジャラリと鎖が鳴る。
あの日、灰になって空へ飛んでゆくはずだったミラは、今も地に足をつけたまま。鎖付きで。
シェスは何も言わない。見ると、苦痛に顔を歪め、脇腹の辺りを押さえていた。真っ白だった神官服に赤色が滲んでゆく。
「ッ、もう効果が……」
「怪我して、る?」
「君には関係ない」
苛立たしげに吐き捨て、立ち上がって出口まで歩いてゆく。
先程の痛そうな顔はこれだったのか、とミラは納得した。無理してここに来た理由はわからなかったが。
不意に、シェスが戸の前で立ち止まって、ぽつりと言った。
「君は本当に、泣きも、怒りも、……笑いもしないね」
ミラは虚ろな目を緩くまばたいて、首を傾げた。
「笑ってほしいの?」
「……さぁね」
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