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少女は、最期の瞬間まで微笑んでいた。
石畳の広場に、興奮した民衆がひしめき合う。飛び交う怒号、熱気。絡みつくような悪意。視線は十字に磔にされた少女に注がれていた。
少女は美しかった。
粗末な服に裸足の足、痣だらけの肌で晒し者にされて尚、波打つ金色の髪や、青い瞳や、微笑をたたえた唇には、清廉な魅力があった。誰もが、憎悪と侮蔑の言葉を吐きながら、目を奪われてしまうほどに。
少女の足元に火がつけられ、風に巻き上げられて一気に燃え広がる。醜い歓声が上がった。
少女は一度だけ、自分の瞳と同じ色の空を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。
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