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「どこに帰るの?家族のところ?ははっ、これは傑作だ」
「やめて」
「君が生きて戻っても、居場所なんかとうにないのになぁ」
「やめてッ!」
悲鳴を上げて、ミラは両耳を塞ぎ蹲った。
ガタガタと身体が震える。溢れ出した涙が頬を伝う。
シェスはにっこり笑って、告げた。
「君の家族が、君を魔女だと告発したんだ。保身のために、ね」
ザクリと、氷の刃が心臓に刺さった。傷口から漏れた血は流れる前に凍りついて、怒りも恐怖も奪ってゆく。
糸の切れた人形のように、ミラはふらりと倒れ込んだ。シェスの腕の中へ。
シェスは愚かな生き物を見る目で、啜り泣くミラの顔を覗き込む。憐れみと、嘲り。あとは、一滴の愛しさに似た何か。
「可哀想な可愛い魔女。死に損ないの魔女。僕が飼い殺してあげる」
愛の告白のように甘く囁いて、ミラの唇を奪った。
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