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東京まで特急で出て、東京で東北新幹線に乗り換えるときは人酔いをしそうだったが、東北新幹線が北に向かうほどに人の数は少なくなっていく。
「北へ向かう人の群れは誰も無口で~」
由香は窓の外を眺めながらそんな歌を口ずさむ。
「しぶいねぇ」
苦笑を浮かべる私に由香ににししと笑顔を見せる。
「花菜、目赤いよ。昨日、ちゃんと寝た?」
「ううん。あんまり」
「寝なよ。旅は長いんだよ」
「うん……」
本当は起きて由香と話をしていたかったけど、遠足前日に眠れない小学生みたいに私はほとんど眠っていない。
睡眠不足が原因で目当ての場所で具合が悪くなったら嫌だもの。
私はまぶたを閉じる。
新幹線の走る音が耳に静かに入り込む。
どうして私はこんなにも十和田湖に行きたいのだろうか。
まるで運命のような。
私はそのまま眠ってしまった。
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