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歩いても歩いても続く山道。
車は時おり通るけど、下手に止めたら連れ帰されるかも知れない。
家からこっそり持ち出した水筒の水を飲みながら私たちは歩く。
どこまでもどこまでも歩く。
会話なんかなかった。
足なんか棒みたいだけど、真昼が『お父さんのとこに行こう!』って一緒に頑張ってくれてるんだ。
負けないよ。
歩く速度はどんどん落ちて、太陽もどんどん沈んでくる。
息は切れ切れ。お腹の虫がぐうとなる。
「今、どこら辺かな?」
「……ごめん。千恵、暗くて地図が見えないの……」
太陽が消えて星空が見下ろす山道で真昼は泣きそうな声を出した。
ごめんなさいと千恵が泣くけど、私には十分だ。
「うん。千恵ありがとう。もう車止めよう。もしかしたら、お父さんのいる十和田湖に近いかも知れないし」
「うん」
暗闇の中で小さく頷いただろう真昼の手を握って私たち道路の横に立つ。
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