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「で、そう言う桐生さんが、この件を自分の仕事じゃないから施設管理課に任せるって言うのがさ。なんでも自分でやっちゃいそうなイメージだから」
「それは誤解です。
庶務課は職員が働きやすい環境をソフト的側面から整えるのがミッションですが、施設管理課は建物そのものや物品の管理に特化しています。
問題を発見次第報告することは業務範囲ですが、この補修や修繕業者の手配は違います。
それに、門外漢であることを自覚しているのに口出しはできません」
「んじゃ、医事課の時は?」
「医事課長のされていることが如何に病院業務に悪影響を及ぼしているか、客観的な数字をもとに説明申し上げただけです」
「こんなにかけるんじゃねえぞって?」
「いいえ。私用電話のために2分回線を塞いだ場合の患者の死亡率を計算しただけです」
「なにそれ……」
「救急車専用のホットラインもありますが、それはより緊急性の高い2次救急や3次救急車のみです。
回線も少ないので代表電話にかかってくることも少なくありません。
他院からの地域連携業務の電話も、同様です。
代表電話の回線を塞ぐと言うことは重篤な患者の命を奪うことにもつながり兼ねません。それを数字で提示しただけです」
つまり、お前が誰かを殺す確率はこれだけあるんだぞって、脅しをかけたってことじゃねえか。そりゃあ、医事課も桐生さんを苦手に思うはずだ。
「ちなみに、それ、どこか他に提出した?」
「改めていただくことが目的なのに、誰かに提出する必要がありますか?」
脅しのネタをつかまれているわけだ。
少しばかり医事係長を哀れに思いながら、私は北階段の入り口のドアを開けた。分厚くて重い鉄製の扉を、肩を痛めている桐生さんに開けさせるわけにはいかない。
庶務課に戻ったら最初にヒビのことを報告しないとなあと思っている時だった。
「友利さん」
桐生さんの声が硬い。
「おいおい、なにがあったってんだ?」
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