怪我人たちの静かならざる日常

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「うわっ!」  男の子が悲鳴をあげるが、はい、残念。 「俺、昔バスケ部だったんだよねえ。フェイクかますの、割と得意でさ」  はい、確保。  ニッコリ笑いかけて抱き上げる。  おうおう、軽いなあ、ガキ。 「さて、と。んじゃ、病院にーー」 ーーウィンウィンウィン!!!  唐突に爆音が響いた。  見れば、男の子が首から下げた卵のような形のものを握っている。  言わずと知れた、防犯ブザーだ。 「待って待って、俺たち、怪しいもんじゃねえって。病院の人!!」  病院の周りはリハビリを兼ねて散歩をする入院患者が沢山いる。  音を聞きつけて人々が集まってきた。 「桐生さん、助けて! 事案になるっ!」  あああ、お願いです患者様。スマホで写真とか勘弁してください。  不審者じゃねえってば。  私たちは、しがない下っ端の事務員です!!
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