ランチタイムありふれた日常

5/5
前へ
/230ページ
次へ
「だよなー。母乳とか届けないといけないだろうし。お母さんは大変だ。でも、子供と生花は病棟に入れないもんな」  なるほどなあと思いながら、温めなおしてもらったパスタ口に運ぶ。  少し伸びてしまっているがソースが美味しい。 「もちろん、違う病棟や、母親自身が通院している可能性もありました。しかし先日ここでお会いした親子を思い出し……」 「もしかしてって思ったわけね」 「はい。NICUに伺ったところ、正解でしたので、少しお話をしてきた次第です」  そういう事だったのかと思いながらパスタを平らげる。もともと食べかけだったせいで量が少ないからあっという間だ。 「でもよかったな」 「はい。無事に済みました」 「いや、桐生さんが」  先日は、カフェの前でかばった子供に泣かれてしまったが、今日は違う。 「カッコいいってさ。今度から、ゆーと君が折り紙の中に書くのは、わんわんヒーローじゃなくて桐生さんだったりして」 「丸の中に三つの丸が書かれると?」  目と口で三つの丸か。  桐生さんは相変わらず無表情だが、すぐにラテを飲んだのは照れ隠しだということくらいはすぐにわかる。  そうだな、これは桐生さん通訳検定3級以下の問題だ。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

429人が本棚に入れています
本棚に追加