ヒラ事務員の切ない日常

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 321人収容できる大講堂は、病院の中の行動とは思えない広さだ。  ざっと見渡した限り、混んでいる。  もちろん数席空けて座ったりしているから、詰めて座ればせいぜい50名ほどなのだろうが、それでも結構な人数だ。  これだけの関係者を誘導するなど、私一人では到底できないことだった。  講堂に集まったのは患者である高校生の家族だけではない。学校関係者も含まれている。  3階のナースステーションから北階段にあふれていた人々は、やはりこの事故の関係者だった。  北階段を使ったお陰で、気づくことができた。  何しろ、救急外来受付に手伝いに来ていた師長も3階の北階段に関係者があふれていたことは知らなかったんだからなあ。  どうも、そちらに入院することになった患者がいた為に、入院する患者は3階と言う誤った情報が伝達してしまい、一部の家族がそちらに集まっていたようだ。  そこにいると気づかないまま、説明会をやっていたら、あとあと大クレームになる。  私の足元にはクロネコがちょこんと座っている。  こいつのおかげで気づけたのかもしれないしなあ。  仕方ない、ササミ肉買うか。 「事故の詳細、なぜ起きたのかと言うことは、後日学校を通して説明があると思います。ここでは治療に関してのご説明に限らせていただきますのでご了承下さい」  壇上では、飯塚事務局長が説明をしている。もちろん、この事務局長は現役の、現在進行形でご存命の方だ。人生ごとご引退されている幽霊事務局長ではない。 ==== ササミ肉を買う買う詐欺に定評のある友利です。
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