ひび割れそうになる日常

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「わたしが子供を追いかける際、友利さんを巻き込んでしまいました。頭を怪我していることは重々承知していたのに……申し訳ありません」 「ちょ、ちょい待てって。それさ、桐生さん謝るところじゃなくねえ?」 「わたしが動かなければ、友利さんも無理はしなかったはずです」 「そうじゃねえだろ。っつーかさ。桐生さんだって、怒られたりしたんじゃねえの? 何か言われなかった?」 「看護師長からおしかりを受けました。それから、管理課長からも他の人が真似すると困るので、あのような動きはしないで欲しいと」  走っていた時の桐生さんの姿を思い出し、ため息が漏れた。 「いやーそれはねえだろ。あんなんできるの、桐生さんくらいだって」 「真似をしようとする人が出てくることが問題ですので、できるか否かではないのではないかと」 「あきらか、フツーの人はできないから、最初からやろうとしないだろ。それに、ここ病院。病人と怪我人はあんなことはしねえの」 「した人がいるではありませんが、ここに」  どいつだよ、とツッコミを入れたいが、そこまで耄碌はしていない。私だ。 「分かった。うん、俺が悪かった。俺が真似したせいで、桐生さんが怒られたんだよな。ごめん」 「何故、それで友利さんが謝るのですか。明らかに友利さんは――」 「うん、だから、ここで終わりにしようぜ、この話は。俺も、桐生さんも今後は患者の自覚をもって行動しましょうってことで」 「しかし」 「いいんだって。思い出せよ。桐生さんだってさ、骨にヒビが入ってるんだろ?」 「……」 「だから重要なことはただ一つ。俺たちは怪我人なんだから、おとなしくして、これ以上うちのドクターや看護師さんを忙しくさせないことだよな」  ポン、と肩を叩き、席に座る。  いつの間にか、隣の席の上にクロネコが座っていた。  隣は桐生さんの席だ。  クロネコに視線を向けると、自然に桐生さんが見ていたパソコン画面が見えてしまった。 「関係企業一覧……?」
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