時間外勤務が日常

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「動物はわたしの専門外だから……色々ね、難しくて。専門外には手を出すものじゃないわね。あのときはよく分からずに必死でやったけど。多分、人間と同じようにやったらいけない事がいくつもあったんだと思うわ。本物の獣医さんに診てもらっていたら助かっていたのかも。猫ちゃんに家族がいたら、専門外の医師が手を出したせいで死んだって訴えられちゃうわね」  どこか懐かしいものを見るように、私達を見ていた絹井先生は、脚立から腰をあげると尻をポンポンと叩いて埃を払った。 「さて、すっかり長居しちゃったわ。年寄りの思い出話は長くなって駄目ね。あら、大変。怪我人がこんな時間まで残ってたら駄目じゃないの」 「先生は……」 「わたしはこれからあちこちに連絡しなくちゃ」  遅出だった私たちと比べて、絹井先生は朝から勤務していたはずだ。  時計はすでに11時に近い。 「こっちは時間外勤務はいつものことだから気にしないで。怪我人は回復に努めるのが仕事だから、早く帰って休みなさい」
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