事務局長の穏やかな日常

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「絹井先生が結城事務局長の遺体を見つけたって言ってただろ。絹井先生……助ける事ができなかったことの責任を感じているんじゃねえかな。だってさ、待合ホールに飾ってある肖像画って絹井先生が描いたやつだろ」 「そうです。結城事務局長を非常に尊敬していらっしゃいます」 「もし、俺が結城事務局長だったら、そう言う人に自分の遺体を発見させてしまったってことに責任を感じるよ。申し訳なくて顔むけができない」 「そう言うものでしょうか」 「本当のところはわからないけど。桐生さんから見えてる結城事務局長って、今どんな顔してんの?」 「友利さんの発言に頷いています」 「ってことは、これで正解ってことか。それにしても、こえぇな。……マジで幽霊なんだなって実感した」 「今更では?」 「そうなんだけど。俺に見えてるのは猫だからさ」 「桐生さんには猫……それについては、わたしにも仮説があります」  私には猫に見え、桐生さんには結城事務局長が見えた。 「結城事務局長とクロネコ……二体の幽霊がいたのではないかと考えられます。幽霊の正しい単位が不明なので、二体と言っているのは暫定的表現です」 「単位はいいけど。別々にいるって?」 「もしも猫がわたしの前に現れたら、病院内から猫を追い払うことを優先するでしょう」  だろうなあ。 「そして、結城事務局長が友利さんの前に現れたら……」
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