事務局長の穏やかな日常

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「わたしは表情に乏しいせいか……昔からなにを考えているのかわからないと言われました。これまでの人生で、友人と呼べる人は片手で数えるほどしかいません」  いない、と言い切られるより、微妙な数字を言われる方がリアルで切ない。 「ですが、桐生さんは友人でもないのに私がなにを考えているのか汲み取ってくださいました」 「友人でもないのにって。さりげなくひどいこと言ってねえ?」 「友利さんは大切な同僚です」  うん、確かに間違いなく同僚なのだが……もう少し言い回しってものがあるんじゃないか?  とは言え、桐生さんには全く悪意がないのはわかっている。 「んで、それはいいとして。俺だと考えてることが分かっちゃうから、結城事務局長的には嫌だったってことか」 「結城事務局長は表情豊かな方です」 「コミュ力高いって言うならそうだろうな……で、いろいろ気づかれたら怖いって? 何だそりゃ」  そう笑い飛ばすが、正直なところ、助かったと思っていた。
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