相談室の慌ただしい日常

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 相談室は、当院において最も忙しい部署と言っても過言ではない。  ドアを開くなり、いくつもの電話が鳴り響き、相談員が右へ左へ動き回り、アシスタントの事務パートさんたちが椅子を横にどかして立ったままパソコンを操作している。 「う―わー……知ってたけど、すげえな」  ここにいるのはメディカルソーシャルワーカー、日本語で言えば社会福祉士の資格を持つ相談員をはじめとした患者支援のプロフェッショナルたちだ。  患者の入院から転院退院に至る一連の手続きはもちろん、退院後の生活支援の相談や病気のせいで不安定になったメンタルケアまでひきうけてくれる。  更に、転院や退院後も相談員との関係は切れない。病院に保管されている患者の情報は、必要に応じて相談員を通して医療機関同士で共有され、患者にとってベストな治療が受けられるようになっている。  設備が整っている大きな病院でしか受けることができない特別な検査や高度な治療や手術を受けたのちは、かかりつけ医の元に戻って日常的なケアを行ってもらう――これを医療の地域連携といい、相談員はその橋渡しを担う。  それだけに、精神的にも肉体的にもハードなポジションだ。 「庶務課さん、何か用ですか?」
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