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「そんなことねえだろ。桐生さんの資料が効いたんだって課長も言ってたじゃん?」
「絹井先生もおっしゃっていましたが、わたしは、友利さんのお力によるところが大きいと思っています。私は資料を作っただけです。それを……絹井先生を巻き込もうと考え、実際に動いたのは友利さんではありませんか」
「だから、俺は何もしてねえって」
「ひとりでできることには限りがあります。特に私たちのような立場であればなおさらです」
桐生さんはこうと決めたら絶対に譲らないところがある。
お前の手柄だぞ、しっかり受け取れってことか。
でもな、桐生さん。
やっぱり、凄いのは桐生さんだと思うぞ。
「桐生さんが言う事もわかる。事務員って立場弱いし、力もないし」
「だからこそ、友利さんの能力が必要とされるのかもしれません」
「なんだよ、おれの脳力って。スーパーマンじゃねえぞ」
「友利さんは、目的から何が必要なのかを考え、それに最も適した人材をその場所に配置する能力に長けています」
「なんだそりゃ」
「そういう力は、より高いポジションでこそ、活かされます。わたしが得意とする地道な作業などは誰にでも出来るものです。もちろん、スピードや完成度はある程度の違いがあるでしょうが、わたしでなくとも可能です」
「あー……事務局長と俺、似てるって、アレ?」
「絹井先生にも言いましたが、似ていますよ。今、結城事務局長が目の前にいますが、やはりそう思います」
「俺の目にはクロネコに見えるけどな」
この話は平行線だろう。私には、伝説のように語られる事務局長のようなすごい事は何もできない。
庶務課長は、私からコミュニケーションスキルを学べと桐生さんに言ったそうだから、それを修得したら最強ってことじゃねえか。
きっと桐生さんは、そのことに気づいていないのだ。
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