ヒラ事務員たちの悲しい日常

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「それよりも、こちらの折り紙をどうにかすることを考えねばなりません。本来、わたしはこの為にいつもより10分早く庶務課に来たので」  クールすぎるふるまいを見ていると、からかわれたような気もするが、桐生さんが言っていることは正しい。  時計を見ると、桐生さんがいつも庶務課に到着している時間よりも5分すぎている。 「ごめん。手伝う。何を調べてたんだ?」 「入院患者リストから、犬飼と言う名前を探します。ここにあるのは昨日のリストなのですが、見当たりませんでした」 「そうか。という事は退院している可能性があるよな」 「そうですね」 「んじゃ、どうするよ。病棟ならともかく、退院してるとなると……」  桐生さんが持っているわら半紙の束を受け取る。確かに、そこに犬飼の名前はない。  あいうえお順に並ぶ、入院患者リストは、昨日の朝9時の段階のものだ。  患者の名前のほか、ID番号、生年月日、連絡先、治療におけるキーパーソンなどが書かれている。ここに犬飼さんの名前が書かれていれば、一発で電話番号と住所がわかったのだが、残念だ。 「当院の理念は、結城事務局長のお言葉通り――『人々の痛みと苦しみを軽減させるため、責務を全うする』ことです。犬飼さんはその理念に沿う行動をしてくださいました」 「ってことは、俺たちにとっちゃ、恩人みてえなもんか。届けないとだよな」 「当然です」
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