地上へ

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 こうして収穫したものを、壁面に打ち付けた金属の階段をカンカンと下りながら、農夫や漁師たちはブロジアの市街地に帰っていく。 ブロジアの市街地は、高さや大きさが異なる石の建物が建ち並び、窓には明かりがあかあかと灯っている。道路に敷かれた線路では列車が鉱山と鉱山の間を走り、その上には八本の脚を持つ巨大なクモのような形をした機械が煙を吐きながら巡回している。  移動城塞アドルフ・ブロジア。  ブロジアの皇帝アドルフ・セドラーが玉座に鎮座し、兵士たちがブロジアのドワーフたちを絶えず監視していると言われている。  「何時になったら、あのクモは退くのかねぇ」  ブロジアの市場に到着したドワーフの農夫は、アドルフ・ブロジアを眺めてそう呟いた。農場から見下ろせば地を這う小さな虫に見えたそれは、こうして見上げれば巨大なクモがこちらを睨んでいるかのようだ。
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