地上へ

　「この煙さえなければねぇ」

　ドワーフの漁師は、アドルフ・ブロジアが背中のパイプから吐き出すうっとうしい煙に顔をしかめながら、かごの中の魚を市場まで運ぶ。

アドルフ・ブロジアを動かすために石炭を燃やしているが、その度に大量のけむりを吐き出す。視界を濁らせ、喉を枯らし、食べ物を劣化させるこの迷惑なけむりは、ブロジアに長い間充満している。

ブロジアの民はみなマスクを装着して煙から身を守っている。

　「あの煙のお陰で、母の病気がなかなかなおらないのよ。おじさん、ジャガイモとタマネギ、それからニンジンを五個貰えるかしら？」

　市場へやって来た女性ドワーフが、巾着袋から金を取り出すと、木製のテーブルにコロコロと転がした。