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女は床に膝をついて、膝に当たった空のペットボトルを向こうに投げて、膝をつき直して、おれの顔を覗き込んだ。
美人だった。前言は撤回する。きっと脚も長い。
いや、殴られたんだな。やっぱり短足に違いない!
このブ……、やっぱり美人だ。
「思い知ったかしら? この浮気者!」
女はおれに言うが、何も思い知れやしない。どこのリア充と間違えてんだろう。
「……だれと、間違えてんだ?」
やっと、声が出た。
「だれと?」と女は訊き返した。声は残念だった。
その残念な声で女はおれの名前を口にした。
間違えていないのか。じゃあ同姓同名か?
いや、この地方には珍しい苗字だからなぁ。
女はおれの胸ぐらを掴んで更に顔を寄せてきた。
あ、左頬のホクロをメイクで隠してる。小さいのが3つある。
「間違えるわけないでしょ? あたしはアンタを愛してるんだから!」
愛してるんなら硬ったい棒で殴んなよ。
え? ストーカーか何かか?
「こ、告白なら普通にしてくれよ」おれは声を絞り出した。
「コクってねえわっ!」頬をつねられた。
「痛だだだだだだだっ!」顔が怖い。
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