片方の目に映るセカイ

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片方の目に映るセカイ

 世界は狭い。  家と通勤路と会社、それが俺の世界の全てだ。  寝泊りの為だけに存在するボロいアパートの小さな一室。  下らないニュースと暇つぶしのゲーム。スマホ画面にコンクリートの背景が延々と映し出される外の風景。  理不尽な上司の顔色を窺いながら、不真面目な同僚や後輩に呆れながら、一日の大半をパソコンに向かって黙々とキーボードを打ち続けることに費やす。  肉体と精神が疲弊するだけの退屈な日々、それが俺の世界の全てだ。  別に、何かを期待しているわけではない。  自分から何かを起こそうとしているわけでもない。  こんなつまらない日常にも妥協して、ただただ足元ばかり見て無為に過ごす。  だって、その方が煩わしさがなくて楽だから。  だって、その方が自分の無能さに落胆しないから。  きっと、俺はもう自分の人生に疲れているんだ。  ――そしてそれ以上に、俺はもう自分自身の可能性を諦めているんだ。
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