片方の目に映るセカイ

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 それからは、特に足を止めることなく捨て猫の顔を横目に通勤する日が続く。  日に日に身体は薄汚れ、助けを求める鳴き声は弱々しくなっていった。  この2,3日なんかは顔も満足に上げられなくなっていて、段ボール箱から少しだけはみ出た耳だけが、小さな命の存在を周りに示していた。  今日はどうだろうか?  まるで夢を買った宝クジのような半ば諦めの心境で、手にするスマホの画面から目を離しチラッと段ボール箱に目を向ける。  !!!!?  猫が……いない!!?  まさか近くで野垂れ死んでるのではないかと箱の辺りを見回すが、影も形も見当たらない。  ひょっとして本当に誰かに拾われたのか?  いや、そんなハズは……一体どこに――――!!?  ふいに近くの横道から黒い塊が現れた。あの猫だ。  何だいるじゃねえかと複雑な気持ちを抱くや否や、あろうことかそのまま車道の方へトコトコと歩いていくではないか。
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