お天道様が見てる

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お天道様が見てる

「悪い事をするとお天道様から罰を受けるんだよ」 男は小さい頃から、そう教えられて来た。故に男は太陽を恐怖していた。 家に篭り太陽の出ている時には決して家から出ない。男の家はいつも雨戸が閉められ、カーテンも常に閉められていた。 男はもう何年も青い空と云うものを見たことがなかった。男の記憶の中にある空の光景は、どんよりとした黒い曇に覆われた空か、真夜中の闇に包まれた空だけである。 男は悪人ではない。寧ろ善人である。けれど、男は自分の行動の多くが罪深い行いだと信じていた。だから、お天道様を恐れた。 ある日の夜中男は家を出て車に乗り出かけた。これが男の唯一の趣味と呼べるものであった。太陽のとっくに沈んだ時刻に家を出て、時計を確認し、日の出の時刻前には家へと帰る。それが男の日課だった。その日も男は、ブラブラと車を走らせたり、買い物を済ませたりしていた。そして午前四時を過ぎた頃、帰路に着いた。 東の空はもう白み始めていた。男は焦りスピードを上げた。住宅街に面した小さな交差点に差し掛かったところで、交差点の右方から伸びるライトの明かりが目に入った。     
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